祭礼と獅子舞とお囃子
石岡のお祭りという一大行事
「石岡のおまつり」は、正式名称が「常陸國總社宮例大祭」であり、創建千年を誇る古社である常陸國總社宮(HPリンク)の最も重要なお祭りです。江戸時代の中期、武家の祭りが民衆に移った頃から、奉納相撲や豪華な出し物などが加わって現在の形に発展した比較的新しいお祭りといえるでしょう。
古き良き伝統を民衆たちの手によって育んできた民衆の芸術であり、郷土の芸能です。伝統とは創られ、移り変わりゆくものだと思います。
この祭りは、9月15日の「例祭(総社宮境内のみ)」および「敬老の日」を最終日とする3連休(計3~4日間)に開催され、約50万人の見物客で市街地が大賑わいします。
「石岡のおまつり」は、出身者にとっては思い入れのある祭りで、「正月やお盆には帰省しなくても、おまつりには帰る」と言われるほどの人気があります。また、「関東の三大祭」としても知られており、その中には、石岡のおまつり、佐原の大祭、川越まつりなどが挙げられます。ただし、諸説あり、その中には東照宮千人武者行列、秩父夜祭、浜降(はまおり)祭などが含まれることもあります。
石岡の獅子
石岡の獅子舞の特徴
石岡市の獅子舞は、車輪が付いた小屋付きの幌を纏ってで演じられることが特徴的で、幌獅子と呼ばれています。全国的に珍しい獅子舞の一つです。獅子頭の大きさや形状は、地域によって異なりますが、石岡市の獅子頭は眉が太く、角がなく、犬のような表情をしています。町内によって多種多様で、なかには真っ黒な獅子や薄紫色の獅子もいます。石岡市内には約30の町で獅子舞が伝承されており、その形態や演出方法は町ごとに異なります。獅子舞には、囃子や太鼓、笛、鉦などの楽器が伴奏することが一般的で、地元の伝統的な音楽が演奏されます。各町の太鼓の音色を聴き比べてみると意外な発見があるかもしれません。
獅子舞は、鎮守や豊作祈願、病気平癒など、様々な神事や行事に用いられ、地域の人々にとって重要な文化財として受け継がれています。また、獅子は魔除けの効果があるとされ、家庭でも飾られたり、神社仏閣での奉納やお祭りなどでも演じられます。石岡市で製作される常陸獅子は茨城県郷土工芸品に指定されています。
石岡の獅子舞の由来
石岡の獅子舞は人気がありますが、その由来については明確ではありません。
しかし、1854年の『香丸組御用届』に「愛宕祭礼...土はしは当年より定例大獅子」という記述があり、それが初見となっています。この獅子舞は元々、行道の獅子として、悪魔祓いの意味が強く、民家を回ったり、道路の魑魅魍魎(妖怪や化け物)を呪圧したりするために行われていました。また、獅子が口を開けるのは悪魔祓いのためです。愛宕神社の祭礼で冨田町のささらや土橋町の大獅子など、様々な風流系の獅子が独自に祭りをやっていたものを、近代になって総社宮の例大祭に取り入れられました。山車も富裕層の商人が後になって取り入れたものであるとされます。祭りの華やかさが競われ、観光要素が強くなる一方で、元来の意味が形骸化していく時代への流れがあることにも注目が必要です。
石岡の獅子頭製作
石岡市では、古い獅子頭は主な部分をひとつの木から彫りだす一木造り(いちぼくづくり)が多いですが、近年では複数の木材を組み合わせる寄木造り(よせぎづくり)で行うことで、獅子頭の重さを軽くしコストを抑える技法が一般的なようです。常陸獅子彫刻伝修館は、現在石岡の獅子頭製作を担うコミュニティの中心的な存在であり、毎週土曜日に製作体験を行っています。
演目
撒喜利(さんぎり)
事の初めや終いに囃す締太鼓であり,無事安全祈願の意味合いがあります。 石岡のお祭りでは、初日に獅子や山車が会所(その地区のお祭りの拠点)を出発する前と、最終日に会所に戻ってきたときに演奏します。そういった背景から、さんぎりを聴ける機会は観光客側からすれば幸運ともいえます。さんぎりは山車の囃子連が演奏することが一般的ですが、幌獅子の囃子連も演奏する場合もあるようです。
また、おおまかにその地域を源流とする染谷流と、三村流の2パターンがあり、共に演奏が異なります。かつては、石岡に囃子連は存在しておらず「三村」や「染谷」などの地域の囃子連に依頼して山車を運航していたことに由来します。
巡行舞(乱舞)
石岡のお祭りでよく耳にするあのお囃子を獅子小屋に乗り込んだ囃子連が奏でます。祭礼時、強さの象徴とされる獅子は行列の先頭を歩き、露払いを行う役目を担います。また、町内の安全祈願や家内安全、悪霊退散を目的とした祈願やお祓いをする目的もあります。
幌獅子のなかで最も格式高い土橋町の獅子の囃子を基準とし、各町内によってリズムや音色が少しずつ異なります。若松町及び保存會ではこの乱舞を巡行舞と称し、独自にアレンジを加えています。
祝い(祝い太鼓)
若松町独自のもので、リズミカルで力強いお囃子が特徴です。石岡のお祭りでは夜などここ一番盛り上がる時やお世話になった方々、団体への御礼に行いますが、明確な基準はありません。祭礼期間中にこの演目を見られたらラッキーです。
一連の獅子舞でお清めを行った後に、それを無邪気にお祝いする意味合いが込められています。
眠り獅子
稀に行う、昂った獅子を鎮める演目です。